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■パズルパレス
■パズルパレス_b0009493_304038.jpgダンブラウンのデビュー作『パズルパレス』。大分前に読み終わったんですが、久しぶりに読み返してみたら、こういうのって実際あり得るなぁと感心してしまいました。お話はNSAというアメリカの公安みたいな部所のお話。アメリカ人でもこの組織の存在を知っているのは3%だとか。本の中に台詞としてでてきていましたが、かなり意外です。僕はXファイルとか、24とかうさん臭いのも大好きなので、NSAなんて劇中しょっちゅうでてきていたので、アメリカではCIAとかと同じような扱いなのではないかと思っておりましたが、そういう組織なのですね。

ま、海の向こうのことなので実際のところよくわかりませんが、そのNSAに巨大なスーパーコンピュータが極秘に導入されたお話。この機械は世界中の通信を傍受し、その暗号を瞬時にして解き明かす為のもので、もちろんそのことは公には秘密にされており、開発から、担当者にまで徹底的な箝口令がひかれており、存在すら否定されているものでした。クリプトと呼ばれるNSAの暗号解析チームの中で、この導入を巡り、対立が生じます。

電話はもちろん、Eメールに至るまであらゆる通信が、政府によって傍受されているということは、すなわち危険発言はすべて筒抜けということ。テロリストのメール等はすぐに傍受され、実行の水際で食い止められる。こうしたプラスの側面もある一方、これは利用する側にモラルや、正義があって初めて成り立つものになるということで、政府が間違っていた場合はただの言論統制になりかねない。要するに、監視するのもが必要なのだけれど、その監視するものは誰が監視するのかというパラドクスに陥ることになる。誰のための正義なのか、という問題が生じてくる訳だ。

物語はその装置に異議を唱える日本人のNSA技師タンカド・エンセイが究極の暗号技術を作り、そのスーパーコンピューターを無力化すると脅迫するところから始まる。タンカドの望みはスーパーコンピューターの存在を世間に公表し、通信傍受をやめること。

その脅迫から1日後、タンカドはスペインで死体で発見される。究極の暗号技術はすでにインターネットを駆け巡っている。究極の暗号を解く鍵は一体....。

というようなお話でした。

実際NSAはエシュロンというものを持っている。これは米国が主導し、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン国家5ヶ国により編成・運営されている通信傍受システムのことであり、その暗号名である。そして由縁は1948年に秘密裏に結ばれた英米協定に基付いているものである。エシュロンの中心的運営はNSA(米国国家安全保障局)で行われており、本部はイギリスのメンウィスヒル基地に存在する。コードネームは「「P−415」」。エシュロンは全世界の通信を無差別に盗聴するシステムであり、個人どころか、国家・企業までもすべて傍受されているといわれている。

きっとこれをもとにダン・ブラウンは構想したのだと思うが、本の内容を遥かに超えることが行われていそうでぞっとする。金正日の息子「正男」が日本へ不法入国した(ディズニーランドで遊んでましたね)との報を発信した元が、この機関であると囁かれているし、他にも企業を対象とした盗聴により諸所にて暗躍をしているそうな。

盗聴によって安全が守られているのは、動かしがたい事実なのかもしれないが、その安全を守るという正義が誰にとっても正義とは限らない。正義とは相対的なものであるように思うし、一方に取って正義であっても、その対象者(悪と見なされるもの)にとっては自分が悪とは思っていないだろう。

絶対的な正義などというものがあれば、戦争等起こらない。誰にとっても正しいこと等無いのだ。では、相対的な正義を作るのは何だろうか。それは情報であり、思想なのかもしれない。ただその情報は通信によってもたらされるものであるから、そこに何らかのフィルターが等されてしまうようであれば、それは恐ろしいことだ。

情報を握るものは世界を動かす神にもなれるのか。
そんなことを考えさせられる一冊でした。

とはいえ、すぐ読めて、あっさりです。壮大なスケールでありながら、ちっちゃい話です。例えるなら、世界を股にかけた、社内恋愛みたいな(笑)
by mo-gu-mo-gu | 2006-07-18 03:38 | ■Book
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