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■鞄の中身
僕は今はレクレーション施設に変わってしまった郊外の高校に通っていた。郊外と言えば何やら聞こえはいいが、とにかくど田舎である。自転車で行くには当時の自宅から山を2つ超えなければならなかったし、雪でも降ろうものなら自宅から徒歩でバス停→バス→駅→電車→バス→学校と1時間以上の道のりになる。どうにか近道はないものかと友人のO君と山に分け入り、すっころんで泥だらけになり、本気で遭難しそうにもなったことさえある。とにかくしつこいようだけど、ど田舎なのだ。

学校の周りにはコンビニのようなものも一切無く、買い食いしようにも店もないので、皆、品行方正。茶髪などはもってのほかで、短いスカートのコも一切見かけない何とも今時珍しい学校である。それもそのはずで、学校に行くラストにものすごい坂道があり、自転車通学の生徒はちゃらちゃらスカートやら何やらに身だしなみに気を使っている場合じゃないのだ。

当然僕も毎朝汗だくで、坂道を自転車を押して登校していた。ただ一人だけ特別なのがいて、たちこぎどころか、座ったまま無理な体勢で坂道を上ってくるやつがいるのだ。制服に黄色のバンダナ。僕らは彼を野獣と呼んでいた。クラスが違うのでほとんどしゃべったこともなく、体育の授業が一緒になるくらいで、印象はほとんどないのだが彼が持っている鞄がいつもものすごくデカイと話題になっていた。

確かに授業が半ドン(おっさんか)の日も鞄ははち切れんばかりのパツンパツン具合で、とにかく重そうだ。中身がとても気になる。彼はとても無口だし、友達でもないので中に何が入っているか聞くのも変である。分からないとなると、余計に気になるのが人の性。よくよく話してみるとやっぱり同じようなことを思っているやつが何人もいて、休み時間に見てきてやるというのだ。当時は東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件などもあり、今考えてみれば失礼な話だが、子供が入ってるに違いないとかそれぞれアホな憶測をしまくっていた。(バンダナすまん)

放課後、部活の際にそいつに『どうだった?』と聞くとこう答えるのである。
『らんま1/2の単行本がみっちり入ってた』と。

みんなその場に立ち尽くしポカーンとしてしまった。





それから10年近くが経ち、僕もサラリーマンになった。
朝は長距離通勤のため電車に座っていきたいので、早く起きてホームに列を作る。
毎朝、同じような光景で、同じような顔ぶれと、同じような時間に、同じ電車に乗り、
始業までのわずかな惰眠を電車内でむさぼるのだ。

いつもと変わらないその日も、一本やり過ごして中央線のポールポジションを確保し、
空席に向かってまっしぐらだった。ただひとつをのぞいては。

後ろからものすごい勢いで、スーツの男が空席に向かって滑り込んでくるのだ。
空気が読めないその男は割り込みも割り込みで廻りに煙たがられていた。

通勤している方なら分かると思うが、同じ電車に毎日乗るメンツである。
名前は知らなくとも、顔見知りのようなもので、その人が乗ってくると今何時だとか、
あの人は何処で降りるとか何となく分かるものである。
でもその男はどうやら見たことのない男である。

数秒してドアが閉まり、彼は僕の隣の席に腰を下ろした。
....落ち着いて様子を見るとスーツにバンダナである。
間違いない。あいつだ。

相変わらず、鞄はパンパンだった。
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by mo-gu-mo-gu | 2006-05-11 01:14 | ■News
■乙女の気持ち
先日の痴漢疑惑の話の続きではないのだが、先だってのバカ女はきっと、ああはいっているもののホントの痴漢にはあったことがないんじゃないかなと思う。なぜそう思うかというと、僕自身が痴漢に遭っているからだ。ホントの痴漢には声も出ないからね。

始めに断っておくが、僕は婦女子に人気のベビーフェイスでもないし、殿方にすかれるようなむっちり体型でもない(否定はしきれないが)。なので、そういう状況を想像すら出来なかった。実際遭遇するまでは、『オレが女だったらよ〜電車の中引きずり回して警察つれてくね。交番いくまでに眉毛も右側だけ剃っちゃうよね。いや、むしろひっこ抜いちゃうよね。も〜通常生活できないぐらい精神的に痛めつけちゃうからね〜。オレはやるよ。携帯電話の電話かけるボタンだけ抜いちゃうよね』なんて得意げに言っていたものの、いざその立場になってみるとホントに情けないものだった。

よく女の子が声も出せずに、なすがままされてしまってなんて家に帰ってさめざめ泣いているなんて言う場面をテレビでやっているが、ホントにその通りだった。泣きはしないものの、当時の状況はこうだ。

仕事を終え当時のオフィスの五反田から山の手に乗り東京方面に向かう。乗って隣の大崎に着くまでの短い時間の間にもう事は始まっていた。僕のケツをなで回している輩がいるのだ。

正直、声も出なかった。

背筋にぞくっと言うものを感じる。恐ろしいというか、お化けに出逢ったような感覚を想像していただければ分かりやすいかもしれない。男のオレが電車でこんなことになっている。男のオレがだ!!きっと後ろにはフレディみたいなマッチョ髭の明らかにHGな人がいるのだろうと思った。そのうち向こうも興奮したのか、行為が激しくなってきて触るというより、つかむという感じになってきたので、勇気を持って振り向いた。このままでは、東京に着く頃にはケツを轢きちぎられそうな勢いだ。もう既に品川を過ぎたあたり、2駅も過ぎている。

後ろにいたのは160cmぐらいの頭にピッしたら380円ってレジに出そうなバーコードのおっさんだった。『おい、いい加減にしてくんないかな』心臓を叩いてギリギリ言えたのはこんなもんだった。おっさんは『あ、あ、あ、まちがえましたっ』とつぶやき、次の駅で逃げるように降りて行ったが、僕は怒りよりホッとしたのが本音だったと思う。

そんなこんなで、なすがままにされてしまう乙女の気持ちを知りたくもないのに知ってしまったのだが、痴漢はホントよくないです。捕まったやつで罪が確定したら(えん罪もあるのでね)みんな名前を公表したらいいのにと思う。

痴とは愚かなこと。ばかげていること。また、そのさま。
要するに痴漢とは馬鹿な男という意味だ。いつの世にもバカは無くならない。
愛すべきバカもいれば、死ねばいいのにと思うような輩もいる。
世の中は混沌としているから面白いのだろうけど、
人に迷惑をかけるような行為は慎むべきだろう。

いまだに気になるのはあのおっさん捨て台詞だ。
『間違えました』

いったい何と間違えたというのだろうか。
電車でハードに揉むものなどアリもしないだろうに。

今思えば、小一時間とっちめたい気分である。
もちろん、スタイルは万歳させて正座だ。
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by mo-gu-mo-gu | 2006-05-09 05:21 | ■News
■奥ゆかしさ
この間テレビを見ていたら、こんなお話が。

結構有名なお話だそうですが、松山で英語教師をしていた夏目漱石がI love youを訳すときなんと訳したかというクイズが出ていました。答えは『月がキレイですね』だそう。何とも遠回しで分かりづらいですが、これをI love youと解釈してくれる受け手というものがあって成立する話だなぁとつくづく思ったわけです。きっと『明日も晴れですね(Me,too)』なんて会話で、お互いの心が通じ合っていたんでしょうね。なんとも素敵なお話じゃないですか...

これには記号としての言語があり、受け手も記号を変換できる共通の鍵を持っているからこそ、記号でコミュニケーションできるのだということを暗に物語っているのではないかと思う。なので、共通の鍵を持たないものの間では当然意味をなさない。それは同じような感性がなければ受け取れていないということで、きっと僕も今まで山程の記号をスルーしてきたんだろうなと少し恥ずかしく思う。色恋沙汰に限らず、感謝や憤り、哀しみ、ちょっとした嫌みなんかも発信側はそんな思いを込めていくつも発信しているのかもしれない。

きっとこれは、元来島国の日本人だけが持つようなごくごくミニマルな感覚なのかもしれないなぁと思う。数少ない身内でもめ事を起こさないように、遠回し遠回しに角が立たないように洗練されて行ったのかも知れない。

言葉だけでなくて、態度や仕草でもそうだけど、そうすることによってその奥にあるもっと漠然としたものを感じさせてくれるような、漠然とした行為。そうすることによって、そこから想像に至る結果を相手に導くような遠回しな行為。

僕も目に見えるものをただそのまま言うのではなくて、新緑を見て、枯れ木を愛でるような侘び寂びの世界の住人に憧れます。


数日前


仕事の合間に新刊の書籍を見に行く。お目当てのものはなく、結局、余計な小説やら漫画等を両手いっぱいに買ってしまった。本屋は何時間いても飽きない場所。

エレベータのボタンを肘で押し、帰りのエレベーターを待つ。
しばらく待つとすーっとドアは開いた。平日の昼、一緒に乗り込むのは主婦や、本屋の隣の喫茶店で打ち合せを終えたサラリーマンなどなど。閉まる寸前に遅れて一緒に乗り込む女。

エレベーターはそれほど混雑していなく、乗り込んだ書店から駅ターミナルの出入り口につながる1Fまで直通のエレベーターは降りるまでの間は30秒もかからない。

1Fについて遅れて乗ってきた女が降りるや否や、
ほぼドアが開くと同時にコールした携帯に向かって放った一言はこうであった。
『私ぃ〜100%ぁ、電車とかエレベータに乗ると痴漢されんだけど。マジあり得なくな〜い』
そして僕を振り返るのである。

僕は延髄反射でこう思ってしまった。
『病院行け』

まだまだ遠回しライフには時間がかかりそうです。
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by mo-gu-mo-gu | 2006-05-02 04:41 | ■News