人気ブログランキング | 話題のタグを見る
■陰日向に咲く
■陰日向に咲く_b0009493_18342672.jpg人間30も過ぎると情緒不安定になることもたまにはあるんじゃないかと思う。

めっきり最近は涙もろくなってしまってちょっとしたことに心動かされることが多く、映画を見ては泣き、本を読んではタオルを濡らす。でもこれは気がつかなかったことに気がつけるようになった、もしくは、見過ごしていた小さな感傷に気がつけるようになったのかもしれない。そう思うと、歳をとっていろんなことを発見できるようになったことはとてもうれしく思う。

香りには記憶をよみがえらせる効能があると言います。でもそれだけではなくて、温度や空気の流れ、色、言葉...様々なものが集まると、それぞれにまつわる小さなエピソードが浮かんでくるように思います。例えば、夕飯時のお家の前を通ると、食事のほのかな香りに、なんだか遊びをやめて、もうすぐウチに帰らなきゃなんて子供のころみたいな気分になってしまったり、じりじり焼け付くような日差しに、警備員のアルバイトで駐車場に立ち続けた電気屋さんを思い出したり(笑)。

でも、そんな小さな感覚は普段は気にも留めないし、思いついてもふわっとどこかに消えて行ってしまうように思います。いちいち覚えていないし、その都度違う感覚に変わるからでしょう。でもそれを書き留めてひとつつながるようなお話にしたら、街で出逢うどのひとにも素敵なお話がそれぞれにあるんじゃないかなぁと思います。

前置きがどうも長くなってしまいましたが、劇団ひとりの処女作はそんな感じのお話です。
自分とすごく誠実に向きあわなければ、活字に出来ない言葉。小さな感覚をちゃんと言葉にして淡い恋心も、理不尽な怒りや、利己的な慢心も伝えてくれています。

誰に対しての物語でもなく、何処にでも起こりえる小さな物語。
誰にでも味わったことのあるような感覚。懐かしいようで、忘れたい。

そんな、一冊でした。お勧めですよ。
by mo-gu-mo-gu | 2006-04-10 18:34 | ■Book
<< ■WEBSITE:しゃっくりが... iLife06 >>